一人の女性の声によって崩れた比丘
釈尊は、祇園精舎において孔雀本生を語られた。それは、美しく装った一人の女性を見て誓いを捨ててしまった比丘のためであった。釈尊は比丘たちに、七百年にわたる非の打ちどころのない修行を積んだ賢者でさえ、女性の声の響きひとつで一瞬にして崩れうることを告げられた。そしてその後、徳そのものによって守られてきた者にさえ、そのような過ちが起こりうることを示すために、この古い金色の孔雀の物語を語られた。
ダンダカの金の山の上の孔雀
ブラフマダッタ王がベナレスを治めていた時代、菩薩は、ダンダカの金の山に住む、輝くような金色の孔雀として生まれた。夜明けと日暮れのたびに、彼は太陽と、すでに去った諸仏とを讃えて守護の呪文を唱えた。この修行を一度たりとも欠かさず保ったことこそが、彼の安全の真の源であった。
ケーマー王妃の憧れ
ベナレスでは、ケーマー王妃が、金色の孔雀が法を説くのを聞く夢を見て、どうしてもその鳥を手に入れたいと強く願うようになった。王は、その鳥を捕らえるよう命じ、ダンダカの山々へ猟師たちを送り出した。
六人の猟師、六たびの失敗
六代にわたる王の治世のあいだに、六人の猟師が次々に金色の孔雀を捕らえようとしたが、そのたびに失敗した。最初の猟師は、七年もの間その鳥を追い続けて、その試みの中で命を落とした。その後に続いた猟師たちも同じ運命をたどった。孔雀が夜明けの唱えを続けているかぎり、彼のために仕掛けられた罠は、決して閉じることがなかったのである。
七人目の猟師の気づき
七代目の王に仕える七人目の猟師は、それまでの者たちよりも注意深く、その様子を研究した。そして、餌を求めて出かける前に孔雀が唱える呪文こそが、あらゆる罠を失敗させてきた本当の理由であると気づいた。猟師は、もう一度力ずくで挑むことはせず、別の種類の弱点を探した。
夜明けに訓練された雌孔雀
猟師は一羽の雌孔雀を捕らえ、手拍子に合わせて踊り、指を鳴らすと鳴き声を上げるように訓練した。そして、孔雀がまだ朝の呪文を唱えていないうちに、早々と罠を仕掛け、それから雌孔雀に鳴かせた。
唱えられずに残された呪文
雌孔雀の鳴き声を聞いた孔雀は、普段の修行を押し流すほどの強い欲望に襲われた。初めて、彼は守護の唱えを終えないまま餌場へと歩み出た。その瞬間、それまであらゆる猟師の試みを拒んできた罠が、彼の足に閉じかかったのである。
王の前での鋭い問い
ベナレスの王のもとへ生きたまま連れて行かれた孔雀は、王が不死を得る望みから、その肉を食べようとしていることを知った。孔雀は率直に問うた。食べられることによって死ぬ生き物の肉が、どうして他の誰かに永遠の命を与えることができようか、と。さらに彼は、自らの金色の羽は魔術ではなく功徳の果報であると説明した。前世において彼は、正義の転輪聖王(ただ徳によって国土全体を治めるとされる理想の王)として治め、殺生、盗み、虚言、邪淫、飲酒という五つの戒めを、一点の曇りもなく守っていた。そのような輝きは、ただ得られるものであって、貪り食うことによって得られるものではない、と。
証しとなった埋もれた戦車
自らの言葉を疑いのないものとするために、孔雀は王に、王家の池の水を抜き、泥の積もった底を掘るよう命じた。すると、その深い泥の中に、孔雀の語ったとおり、その昔の正義の王が乗っていた宝石で飾られた戦車が埋まっていた。
唯一去らないものについての教え
自らの言葉を証明したのち、孔雀は驚く王に教えを説いた。部分から成るものはすべて、どれほど輝かしくとも不安定であり、やがて時とともに消え去る運命にある。ただ涅槃だけが、この絶え間ない生と滅から解放された、去ることのないものである、と。この教えに心を動かされた王は、感謝のしるしとして国全体を彼に差し出そうとした。しかし孔雀は、その目的を果たしたので、それを受け取ることなく空へ舞い上がり、金の山へと飛び帰った。
師による前世の同定
釈尊は物語を終えると、比丘たちにこう告げられた。その生においてベナレスの王であったのはアーナンダであり、金色の孔雀であったのは自分自身であった、と。一人の女性の声によって崩れた比丘は、この古い物語によって、長い修行でさえ、ひとたび気を緩めれば、どれほど容易に崩れうるかを示されたのである。
罠を超えて生き続けた教え
孔雀本生は、孔雀がたった一度の不注意な瞬間をもって彼を責めることで終わるのではない。また、修行を積んだ者にそのような瞬間が起こりえないと装うこともしない。その代わりに、この物語は澄んだ眼差しの教えを残している。長年にわたり誠実に守られてきた守護であっても、注意が揺らぐとき、一瞬にして崩れうる。そして金の羽や宝石の戦車、さらには自ら差し出された王国とは異なり、真に永続するものは、いかなる複合したものでもない、ということである。
ご存知でしたか?
典拠:パーリ聖典ジャータカ集(ジャータカ・ニカーヤ)第159番。祇樹給孤独園で、女の声に心を揺さぶられた比丘のために説かれた。
六代にわたる六人の猟師が孔雀を捕らえられなかったのは、朝の防護の呪文によってすべての罠が閉じることを防がれたからである。
七人目の猟師は、雌孔雀に踊りと鳴き声を教え込むことで、孔雀が呪文を唱える前におびき寄せ、ようやく成功した。
王の前で孔雀はまず問う。食べられて死ぬ生き物の肉が、どうして誰かに不死を与えられようか、と。
孔雀は王の池から埋もれた宝石の戦車を取り出させ、前世の義しき王であった証を示す。その後、涅槃だけが滅びないと説いた。
